研究概要 |
【研究の目的】消化管悪性リンパ腫における遺伝子学的異常の有無をfluorescence in situ hybridization(FISH)により検索し,臨床病理学的因子との関連を検討する。【方法と結果】新たに診断された症例を追加して,消化管濾胞性リンパ腫45例におけるt(14 ; 18)(q32 ; q21)/IGH-BCL2の有無をFISH法で検索した。FISHの結果、45例中36例(80%)にt(14 ; 18)転座が検出された。転座陽性群は,陰性群と比べて,複数臓器浸潤(67% vs. 0%), MLP(multiple lymphomatous polyposis)成分(67% vs. 22%),組織grade 1-2(92% vs. 56%)の例が多く,CR(complete remission)導入例が少なかった(56% vs. 100%)。さらに転座陽性群は進行・再燃が多く(22% vs. 0%), event-free survival不良の傾向がみられた(P=0.09)【考察および次年度の計画】濾胞性リンパ腫におけるt(14 ; 18)転座の頻度は発生臓器によって異なり,リンパ節に発生する例では60-90%,皮膚では0-40%,甲状腺では約50%と報告されている。消化管濾胞性リンパ腫における報告は少なく,今回多数例で80%にt(14 ; 18)転座を認めることを明らかにした。また,本転座と治療効果・予後との関連は一定しておらず,本研究で転座陽性例が予後不良の可能性が示唆されたことは興味深い。今後は,t(14 ; 18)転座陰性濾胞性リンパ腫におけるBCL6転座やトリソミー3, 18の検索,腸管MALTリンパ腫やDLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)におけるt(11 ; 18)/API2-MALT1やトリソミー3, 18の検索を行う予定である。
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