研究概要 |
【研究の目的】消化管濾胞性リンパ腫における遺伝子学的異常の有無をfluorescence in situ hybridization (FISH)により検索し,臨床病理学的因子との関連を明らかにする。【方法と結果】消化管濾胞性リンパ腫48例を対象としてt(14;18)(q32;q21)/IGH-BCL2の有無をFISH法で検索した結果,48例中39例(81%)でt(14;18)転座が検出された。転座陽性群では,陰性群よりも,消化管の複数領域浸潤(69%vs.0%),ポリポーシス成分(72%vs.22%),組織grade 1-2(92%vs.56%)例の頻度が高く,寛解導入例は低頻度であった(56%VS.100%)。さらに,転座陽性群は進行・再燃が多く(22%vs.0%),無イベント生存率不良の傾向がみられた(P=0.09)。一方,t(14;18)陰性の9例中3例で遺伝子異常(BCL6転座,トリソミー3,トリソミー18)が検出された。【考察】濾胞性リンパ腫におけるt(14;18)転座の頻度は発生臓器によって異なり,リンパ節に発生する例では60-90%,皮膚では0-40%,甲状腺では約50%と報告されている。消化管濾胞性リンパ腫における研究は少なく,今回多数例で80%にt(14;18)転座を認めることを明らかにした。また,本転座の臨床的意義について一定の見解はないが,本研究で転座陽性例が臨床経過不良である可能性が示唆されたことは新たな知見である。さらにt(14;18)転座陰性例でにおけるBCL6転座やトリソミー3,18がみられることも確認できた。今後は腸管MALTリンパ腫やDLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)における遺伝子異常の検索を計画しており,消化管リンパ腫の病態解明をさらに進めたい。
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