研究概要 |
本年は,共役脂肪酸として抗肥満効果や発癌抑制効果,アポトーシス促進など多数の報告がある共役リノール酸(conjugated linoleic acid,以下CLA)を遊離脂肪酸型(free fatty acid,以下FFA)と中性脂肪型(triglyceride,以下TG)に分けて各々牛脂に添加し,腫瘍発生の変化を検討した.CLA・FFAおよびCLA-TGを摂取させたラットにおいて牛脂(飽和脂肪酸)単独群と比較して有意にACFの減少が認められた.腫瘍発生数も有意に抑制された。非腫瘍部粘膜組織においてcyclooxygenase-2(以下COX-2)の発現をwestern blottingにより評価したところ,両CLA添加群で有意に抑制された.また,prostag landin E2(以下PGE2)およびthromboxane B2(以下TXB2)の発現も両CLA添加群で抑制された.Wntシグナルについては,両CLA添加群において非腫瘍部粘膜組織では細胞増殖系シグナルであるβ-cateninおよびWnt2の発現が有意に低下した.非腫瘍部粘膜組織における細胞増殖能を評価したところ,両CLA添加群でBrdU陽性細胞の減少を認め,牛脂単独群では陰窩中部に多く分布したがCLA群では陰窩底部に多く分布するなどの変化がみられた.CLA-FEA添加群でのみ陽性細胞の増加およびcaspase-3活性の上昇がみられた.発癌促進作用のあるSFAの長期摂取においても,CLAを同時に投与することで大腸発癌が抑制されることが判明した.
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