研究概要 |
研究代表者はこれまでに消化器癌組織における全79種類のリボソーム蛋白質の遺伝子発現プロファイルを行い,近接正常組織に比べ癌組織で遺伝子発現が上昇または低下する癌関連リボソーム蛋白質を複数同定した.本研究ではこれら癌関連リボソーム蛋白質の機能解析を通じて,消化器癌の新しい診断・治療予測システムを開発しようとするものである. 平成21年度の成果として, 1. ヒト癌組織におけるリボソーム蛋白質の遺伝子発現 充分なインフォームドコンセントを得た上で提供いただいた,胃癌,大腸癌組織,隣接正常組織から全RNAを抽出し,新たにL15,L35,L14,L23,S11,L22,L23,L26,S19,S27の遺伝子発現をqRT-PCRで定量解析した.その結果,S11,L23,L26,S27が癌組織において有意に発現低下していることを見いだした. 2. 各種ベクターの作成と安定的発現株の樹立 リボソーム蛋白質L11およびL13について発現ベクターとsiRNA発現ベクターの作成を行った.それぞれ,いくつかの癌細胞を用いて,発現および発現抑制を遺伝子,蛋白レベルで確認した.siRNA発現ベクターを安定的に発現するトランスフェクタントを樹立し,L11およびL13のノックダウンを確認した. 3. リボソーム蛋白質L13の発現レベルとp53の関係 いくつかの癌細胞株について,siRNA発現ベクターを用いてL13をノックダウンしたトランスフェクタントを樹立した.その結果,L13のノックダウンにより,p53の蛋白発現が上昇することが明らかになった.p53蛋白の安定性,p53の遺伝子発現には変化がなかったことから,L13がp53の翻訳を抑制することで,発がん活性を発揮していることが示唆された.
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