研究概要 |
Reg遺伝子は炎症によって傷害された消化管粘膜が再生する過程で強発現することが知られている.実際我々はReg遺伝子が胃炎・胃潰瘍および潰瘍性大腸炎でReg遺伝子が強発現し,その発現にはIL-6やIFN-γなどのサイトカインが重要な役割を果していることを明らかにした. そこで本年度は, IL-6シグナルからREG Iα遺伝子発現に至る細胞内シグナル伝達経路を検討し, IL-6/SATA3がその発現に役割を果していることを明らかにした.加えて,同じファミリー遺伝子であるREG IVも潰瘍性大腸炎で強発現することも見出したが, REG IV発現はサイトカイン刺激ではなく増殖因子(bFGF, HGFおよびTGF-α)によって発現が増強し,細胞内シグナル伝達経路はMAPK経路によって制御されていた.以上のことから, Regファミリー遺伝子は大腸炎組織において異なる細胞内シグナル伝達経路によって制御されていることが示唆された。 次に,我々はp53ノックアウトマウスを用い, 4% dextran sulfate sodium (DSS)を投与して大腸炎症発癌モデルを作成した.予備実験では, p53ノックアウトマウスおよび野生型マウス両群で著明な慢性大腸炎が誘発され, p53ノックアウトマウスには12週後にcolitic cancerに類似した大腸腫瘍が認められた.そこで現在,経時的にこの大腸炎症発癌モデルから大腸を摘出し, Regファミリー蛋白発現やその機能解析に向けてサンプル収集を継続中である.
|