研究概要 |
我々はこれまで,Regenerating gene(以下 REG)遺伝子が潰瘍性大腸炎組織において大腸粘膜の再生に深く関与していること,さらには,REG蛋白が胃癌や大腸癌などの消化管癌の発生に役割を果すことを報告した.興味深いことに近年,従来のTh1, Th2リンパ球に分類されなかったIL-17産生Tリンパ球(Th17)がIL-22を実効的なサイトカインとして潰瘍性大腸炎組織で重要な役割を果すことが注目されている.そこで本年度は,潰瘍性大腸炎組織におけるIL-22とREG蛋白の関連について検討を行った.その結果,炎症によって傷害された大腸上皮細胞周囲に存在するリンパ球よりIL-22が産生されること,その産生されたIL-22が大腸上皮に発現するIL-22受容体を介してREG発現を誘導する可能性が示唆された.次に,大腸癌細胞株を用い,IL-22がREG発現を誘導する機序をin vitro実験で検討した.その結果,IL-22がSTAT3シグナルおよび一部MAPKシグナルを介してREG発現を誘導することを明らかにした.加えて,潰瘍性大腸炎に発生した癌の間質組織においてIL-22発現が増強し,癌組織ではIL-22およびREG発現が共に増強している所見を認めた.これらのことから,IL-22/STAT3/REGシグナルが潰瘍性大腸炎からの癌化に重要な役割を果す可能性があり,今後検討していく必要があると考えられた.
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