研究課題
炎症性腸疾患の長期経過に伴う発癌の機序と早期診断のためのサーベイランス法の確立を目的として以下の研究を行った。潰瘍性大腸炎の手術標本を用いた実体顕微鏡観察により、大腸癌やDysplasiaに相当する病変では、pitの構造変化が見られることが明らかとなった。特に隆起性変化では従来の大腸早期癌のパターンが準用出来るが、表面型や陥凹型では困難であり、経口標識法を用いたPhoto Dynamic Diagnosisが有効な症例があることを見いだした。潰瘍性大腸炎においてサーベイランス内視鏡により得られた組織と治療効果の関連を検討した結果、腸管局所では、活動性炎症では制御性T細胞が増加し、炎症の沈静化と免疫監視機構に汎化が見られた。治療により、これらは変化すること、末梢血では腸管局所とは異なった変化であることが明らかとなった。潰瘍性大腸炎におけるサイトカイン発現パターンは活動期にはTh1型サイトカインが増加するが、長期経過の慢性期では、この変化は弱く免疫監視機構の脆弱化が見られた。潰瘍性大腸炎の炎症部ではDNAのメチル化などに特徴的な変異が見られることが明らかとなった。クローン病では、preliminaryではあるが変異の部位や頻度に差が見られた。以上より、炎症性腸疾患の腸管及び末梢血中における免疫担当細胞の異常が免疫監視機構の脆弱化を介して、Dysplasiaなど変異細胞のクリアランスの低下に関連している可能性が考えられ、これらを元に来年度の研究を続けていくこととなった。
すべて 2008
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