研究概要 |
肝臓は鉄代謝の中心臓器である.この肝臓においてC型慢性肝炎,アルコール性肝障害,非アルコール性脂肪性肝疾患などの慢性肝疾患は二次性鉄過剰症を合併することが知られている.そして,個々の肝障害の原因病態と鉄代謝異常はオーバーラップし,相互作用によって進行する.最近の我々の検討では肝疾患の終末像である肝硬変症は原因に関わらず鉄過剰症を合併することも,慢性肝障害の病態と鉄代謝異常がオーバーラップしていることを裏付けるものである レプチン欠損の過食マウスや高脂肪食負荷によるマウス脂肪肝モデルにおいて,肝組織のトランスフェリン鉄取り込みに働くトランスフェリン受容体TfR1の発現亢進が認められ,NASHにおける肝内鉄過剰の原因の一つとしてTfR1の発現亢進が関与していることを示した.さらに肝癌細胞株を用いたin vitroの検討では脂肪酸負荷がTfR1の発現亢進に関与していることを示した また,2008年度にはレプチン遺伝子欠損の過食,肥満および脂肪肝マウスにおいて腸管からの鉄吸収と網内皮系細胞からの鉄放出に対して抑制的に働く鉄代謝因子ヘプシジンの発現が肝組織の遺伝子発現レベルだけでなく,血清蛋白レベルでも低下していることを示したが,本年度はこのメカニズムとしてBMP-Smadシグナル1系の変化が関与していることを示した
|