非アルコール性脂肪性肝炎では、高度の脂肪化が通常、肝細内に認けめられることより、肝に脂肪化が誘導される機構とその原因の解明を環境要因を中心に検討した。食餌成分として、トランス脂肪酸は、動脈硬化性病変や、炎症性サイトカインの上昇を誘導することが知られおり、欧米では表示義務があり、本邦においても、同様の対策が取られようとしている。我々の検討ではマウスに対する長期間(24週)のトランス脂肪酸食投与により、肝に高度の脂肪化が誘導されることが証明された。脂肪合成遺伝子であるSREBP-1や、PRARγが誘導されていることが見いだされ、さらに脂肪酸濃度の上昇が認められたことより、これらが脂肪蓄積の原因として推定された。また、Kupffer細胞の単離の検討から、Kupffer細胞からのTNFα産生がトランス脂肪酸によることが示された。以上は日本、アメリカおよびヨーロッパ肝臓学会、日本および欧州経腸栄養学会などで発表し、論文として発表とた(J Hepatol.2010Aug;53(2):326-34.Epub 2010Apr22)。さらに、高度の脂肪蓄積により、肝臓内に細胞ストレスを反映していると考えられる、p62凝集体が誘導されることが見いだされた。ヒトNASH肝において、p62凝集体、GRP78、Nrf2の発現が認められたため、脂肪蓄積とKupffer細胞のこれらに対する関与を検討中である。Western dietの食餌性成分により、NASHの誘導を証明した点において、意義があるのと考えられる。
|