C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対する予防ワクチンは生体内で中和抗体を誘導することで効果が期待されているが、これまでは効率のよいHCV細胞培養系が存在しなかったため、in vitroにおけるHCVワクチンの評価が困難であった。一方、感染中和抗体はHCVの中和から排除の機序で重要な役割を担っていると考えられているが、その詳細な解析はなされていない。本研究はまだ培養系が樹立されていない、遺伝子型1bおよび2bに対応するHCV培養系を樹立し、各遺伝子型に応じた中和抗体アッセイ系を確立することで、HCV感染における感染中和抗体の意義を明らかにすることを第一の目的とした。 平成20年度は、これらの感染性キメラクローンの構築を試みた。構築したクローンをトランスフェクションしたところ、蛍光免疫染色およびリアルタイムPCRではHCV増殖能は予想より弱いものであった。現在これらの適応変異についてシークエンスを行い検討しているが、より効率のよい感染培養系の構築が必要と考えている。一方、感染培養系をすでに確立した遺伝子型1aおよび2aの系については、今後の実験に必要な培養細胞由来HCVのウイルスストックを大量に作成し、その感染力価の測定も終えていることから、平成21年度に予定している、HCV培養系を用いた中和アッセイ系の確立に向けて準備は整ったと考えている。今年度はこのアッセイ系の確立を行っていく予定である。
|