C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対する予防ワクチンは生体内で中和抗体を誘導することで効果が期待されているが、これまでは効率のよいHCV細胞培養系が存在しなかったため、in vitroにおけるHCVワクチンの評価が困難であった。一方、感染中和抗体はHCVの中和から排除の機序で重要な役割を担っていると考えられているが、その詳細な解析はなされていない。本研究は各遺伝子型に応じた中和抗体アッセイ系を確立し、HCV感染時の感染中和抗体の意義を明らかにすることを目的としている。 平成20年度および21年度においてHCV感染培養系を構築できたが、遺伝子型1bについてはそのHCV増殖能は予想より弱いものであり、未だ感染効率の良い培養系を確立し得なかった。しかしHCV感染性クローンの適応変異について詳細に検討したところ、ウイルス増殖時にその複製効率を増強する適応変異を認めたことから、それらの適応変異を導入した、より感染効率の優れた培養感染系を構築しそのウイルスストックの生成を行った。さらに海外研究協力者である、米国食品医薬品局肝炎研究室Stephen M.Feinstone博士とMarian E.Major博士から、HCV感染チンパンジーのシリーズ血清および肝機能やウイルス動態に関するデータを供与いただき、このHCV培養系による中和アッセイ系を確立した。平成22年度は、HCV感染初期と慢性期のHCV感染チンパンジー血清とHCV感染患者血清を用いて詳細にHCV中和抗体の血中動態を解析し、さらにin vitroで得られた成果をin vivoで検証し、HCV感染時の中和抗体の意義について総括する予定である。
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