研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対する予防ワクチンは生体内で中和抗体を誘導することで効果が期待されているが、これまでは効率のよいHCV細胞培養系が存在しなかったため、in vitroにおけるHCVワクチンの評価が困難であった。一方、感染中和抗体はHCVの中和から排除の機序で重要な役割を担っていると考えられているが、その詳細な解析はなされていない。本研究は各遺伝子型に応じた中和抗体アッセイ系を確立し、HCV感染時の感染中和抗体の意義を明らかにすることを目的としている。平成22年度は、これまでの本研究により明らかとなったHCV感染性クローンの適応変異を導入した、より感染効率の優れた培養感染系を用いて、HCV感染初期と慢性期のHCV感染チンパンジー血清とHCV感染患者血清におけるHCV中和抗体の血中動態を解析した。その結果、感染中和抗体は初期に誘導されるがそのレベルは低く、チンパンジーを用いた再感染実験においても、そのrecallを認めなかった。一方、慢性期のHCV感染では中和抗体価は次第に上昇するものの、長期になると感染中和抗体活性の低下が認められた。さらにHCV抗体陽性患者プール血漿から精製したHCV特異的Igのなかに、中和抗体とその働きを阻害する非中和抗体の存在を見出し、そのエピトープである中和エピトープIと非中和エピトープIIとが互いに干渉しあってウイルス中和活性を阻害することを見出した。このことよりHCV感染においてはウイルス中和を阻害する阻害抗体が存在し、エピトープ特異的な中和抗体とその阻害抗体比がHCVのコントロールやウイルス排除に関与している可能性があると考えられた。
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