研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染により,自然免疫系を介しインターフェロン(IFN)が誘導され,IFN誘導分子はHCV増殖を抑制する.そこで,代表的IFN誘導分子であるPKR,MxA,2-5ASの抗HCV効果について検討するとともに,2-5ASおよびHCV認識に関わるTLR3の遺伝子多型(SNP)とC型肝炎の病態との関連にっき検討した.1)PKR knocked down(KD)Huh7細晦を樹立し,HCV増殖に対するPKRの働きをHCVレプリコンと丁FHI全長HCVゲノムを用いて検討した.PKRKD細胞においては,コントロール細胞に比し,HCVはより多く増殖した。2)MxAKDHuh7細胞を樹立し,HCV増殖に対するMxAの働きを検討した.MxAKD細胞においても,コントロール細胞に比し,HCVはより多く増殖した。3)2-5ASをレプリコンと全長ゲノムが複製しているHuh7細胞に強制発現し,HCV増殖に対する2-5ASの働きを検討した。2-5ASの強制発現により,HCV増殖は抑制された。4)409例のC型肝炎患者において,2-5ASのSNPと臨床病態との関連を検討した。2-5ASのA4119G(SertoGly)多型は,より高値のALT値,および肝硬変と関連しまた,機能的にはHCV増殖抑制能が弱かった。5)437例のC型肝炎患者において,TLR3のSNPと臨床病態との関連を検討した。TLR3のC6300T(Leu to Phe)多型は,より高値のALT値,より少ない血小板数,および肝硬変と関連し,また,機能的にはIFN誘導能が弱かった。 IFNに誘導される抗ウイルス分子であるPKR,MxA,2-5ASはHCV増殖を抑制した.また,HCV増殖抑制作用が弱い,あるいは,IFN誘導能が弱い遺伝子型を有する患者では,肝病変が進展しやすい可能性が示された。
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