研究概要 |
1.C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、IFNを誘導し、IFN誘導分子はHCV増殖を抑制する。IFN誘導分子である(PKRは強制発現によりHCV subgenomic repoliconおよびJFH1 full-length HCV genomeの複製を抑制するが、ノックダウン細胞を用いた解析により、IFN添加(治療)時のHCV増殖抑制に必須でなかった。 2.HCVコア蛋白の第70番目アミノ酸野生型と変異型の個別定量法を確立し、PEG-IFN/RBV併用治療患者におけるdynamicsを検討した。ほとんどの患者において野生型と変異型が混在し、変異型優位の症例は治療抵抗性であったが、同一患者内の野生型と変異型の治療感受性は同等であった。しかし、再燃例では変異型が早期に出現し、変異型は排除されにくい可能性が示された。 3.HCV感染から肝硬変、肝細胞癌(HCC)への進展には著しい個人差がある。C型肝炎における肝発癌に関わるSNPにつきゲノムワイド関連解析(GWAS)を試みた。まず、C型肝癌患者721例、HCV陰性コントロール2,890例を対象として、イルミナチップ(432,703SNPs)によりGWASを行った。それにより抽出された8SNPsにつき、C型肝癌患者673例、コントロール2,596例を対象として、追試験を行った。その結果、MICA遺伝子の5'UTR領域のSNPが強く(P=42x10^<-13>)肝癌と関連していた。MICA遺伝子のSNPはC型慢性肝炎から肝癌への進展にも有意に関連していた。また本SNPのリスクアレルは血中の低MICA濃度と有意に(P=1.38x10^<-13>)関連していた。MICA遺伝子多型あるいは血中MICA濃度測定はC型肝発癌のバイオマーカーとして極めて有望のみならず、MICA発現の制御は新規HCC治療薬の開発につながると期待される。
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