研究概要 |
HCV感染症は慢性肝炎、肝硬変を引き起こし、高率に肝細胞痕を合併することが知られている。また慢性C型肝炎患者においては肝病変だけでなく、insulin抵抗性、脂質代謝異常も認められることを我々は報告し他研究者からも確認されている。HCV core蛋白質が脂肪酸代謝や酸化ストレス誘導に関わるミトコンドリアの機能に影響を与えていることが考えられる。 今回、HCVコア遺伝子トランスジェニックマウス、core蛋白質発現培養細胞において、ミトコンドリア、特に電子伝達系に関わる蛋白に着目し、機能異常とその機序を解明する。 2研究の進捗状況3ケ月齢♂HCVcore遺伝子発現マウスおよび3ケ月齢♂コントロールマウスに対し窒素含有畳およびカロリーを同一としたコントロール餌およびBCAA添加餌を投与し血糖,インスリン測定,臓、筋肉における脂質、糖質代謝およびエネルギー代謝関連遺伝子群発現変化の検討をおこなった。BCAA食によって有意に肝臓の脂肪化抑制とともに血糖の有意な低下およびインスリン抵抗性改善を確認した。また遺伝子発現(mRNA,蛋白)変化の検討において肝臓,筋肉,脂肪組織において解糖系ミトコンドリアTCA、回路電子伝達系における酵素発現をmRNAレベルで検討し、HCVcor蛋白により発現低下、分枝鎖アミノ酸により改善する蛋白を複数同定した。BCAAはC型肝炎における肝臓の脂肪化を軽減し、insulin抵抗性の進行を抑制した。 3現在までの達成度(2)おおむね順調に進展している。上記のようにHCV core蛋白による肝臓脂質代謝変化を改善するBCAAの検討によりHCVによる遺伝子発現変化の検討手段が拡大された。 4今後の研究推進方策HCV core蛋白による解糖系およびミトコンドリアTCA回路電子伝達系の遺伝子、蛋白発現変化および酵素活性変化を網羅的に検討していく。
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