研究概要 |
平成20年度は、『超音波エネルギーを利用した多剤耐性肝癌の新しい治療法の開発』における超音波照射の基本的な条件設定、ターゲットとする肝細胞癌細胞株ならびに多剤耐性遺伝子が誘導された癌細胞株への超音波照射による薬剤感受性の変化など、基礎的な検討を行った。(1)超音波照射の基本的な条件設定:超音波発生装置としてSonicmaster ES-2を用い、35mm dishに培養した細胞に下方から超音波を照射し、照射後の細胞のviabilityを検討。周波数1.0MHz、出力は0.2〜1.0W/cm^2、照射時間は10〜180秒の各条件で行い、出力0.5W/cm^2で細胞のviabilityに変化が確認された。また、マイクロバブル(perflubutane)の併用の有無での超音波照射の効果を検討し、マイクロバブルの併用が細胞死をより誘導する傾向が認められた。(2)超音波照射による抗癌剤の増感効果の検討:抗癌剤(Doxorubicin)に感受性あるMES-SA細胞と多剤耐性遺伝子が誘導されDoxorubicinに耐性をもつMES-SA/Dx5細胞を用いて、超音波照射の有無におけるDoxorubicinへの感受性の変化を検討した。いずれの細胞においても超音波照射によりDoxorubicin作用の増強傾向が認められているが、再度検討中である。(3)薬剤耐性関連遺伝子群の発現の検討:肝細胞癌細胞株における薬剤耐性関連遺伝子群の発現はすでに報告されているが、超音波照射によるこれら遺伝子群の変化の有無を検討する基礎データのため、MDR1, MRP, MRP2(cMOAT), BCRPなどの発現をリアルタイムPCR法により確認した。肝細胞癌では、薬剤耐性関連遺伝子群が比較的高発現であるが、超音波照射によるこれらの遺伝子発現への影響を現在検討中である。
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