研究課題
C57Bl/6Jマウスへの、Hepa1-6マウス肝癌細胞株皮下移植による腫瘍モデルは、経過中移植後10日~15日まで増殖し、その後縮小消失するが、この過程に腫瘍局所の著明な炎症反応が生じる。癌局所における免疫反応と、全身応答を反映すると考えられる末梢血液細胞について、包括的遺伝子発現解析によるその特徴、類似相違の解析のため、本モデルを用いた。1×10^7個のHepa1-6肝癌細胞を移植した後、10日目に、末梢全血RNAを採取、また、腫瘍内炎症細胞をフィコールを用いて分離、RNAを抽出、DNAマイクロアレイWhole Mouse Genome 4×44K Arrayを用いて遺伝子発現プロファイルを解析した。リファレンスには無処置のC57Bl/6Jマウスの末梢全血液RNAの遺伝子発現を用いた。全血においてリファレンスより1.5倍以上の発現亢進を示した遺伝子2474個について、および腫瘍浸潤炎症細胞において1.8倍以上の発現亢進を示し、Hepa1-6細胞では1.8倍未満の発現量の遺伝子738個について、MetaCoreを用いてパスウェイマップ解析、プロセス解析を行った。両者共通に免疫系応答、アポトーシス、DNA損傷応答、組織再構築ならびに損傷修復のマップが示された。プロセスでは、炎症について、IL-6シグナルが共通し、血液細胞ではIL-10応答、アンフォテリン応答が、腫瘍炎症細胞では、インターフェロンシグナル、NK細胞傷害性、補体系がそれぞれ示された。また、変性蛋白に対する応答が共通したプロセスとして示された。包括的遺伝子発現解析によって、腫瘍局所の炎症反応と末梢血液細胞の応答の共通した応答および各々の特徴的な応答を解明できる可能性が示された。
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日本臨床検査自動化学会会誌
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Biochem Biophys Res Commun.
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