研究概要 |
HCVの複製複合体構成蛋白を宿主蛋白とともに発現させ精製することにより、HCV増殖に必要な宿主蛋白を同定し、その宿主蛋白のHCV増殖における意義を検討するのが本研究の目的である。 Tandem affinity purification(TAP)法およびTandem mass spectrometry解析を用い、HCV NS5B結合宿主蛋白としてα-tubulin, HSP70など数種が同定された。 このうちα-tubulinを対象蛋白とし研究を続けた。 免疫組織染色によりNS5Bとα-tubulinは同一の局在を示し、また免疫沈降法により両蛋白の結合が確認された。 平成22年度の成果 1. siRNAによるα-tubulin発現の抑制 Huh7細胞をα-tubulinに対するsiRNAで処理すると、α-tubulin蛋白発現はコントロールと比較し約30%へと抑制された。 2. α-tubmlinの抑制によるHCVレプリコンRNA発現の抑制 HCVレプリコンを持続発現するHuh7細胞においてα-tubulinをsiRNAで抑制したところ、Real-Time PCR法で測定したHCVレプリコンRNA発現は、コントロールと比較し約60%へと抑制されていた。 以上のように本研究により、HCVのRNAポリメラーゼであり複製複合体の中心的な蛋白であるNS5Bと結合する宿主蛋白としてα-tubulinが同定され、両者の結合は免疫組織染色と免疫沈降法により確認され、siRNAによるα-tubulinの抑制により、HCVレプリコンRNAが抑制されたことから、この結合がHCVRNAの増殖に重要な意味を持つことが示された。 HCVの増殖プロセスの解明や、結合を阻害することによる治療的な検討にも繋がると考えられる。本研究では直接の結合部位が解明できず、今後の課題である。
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