研究概要 |
【方法】α型PEG-IFN/RBV施行例を対象とし、細胞内ウイルスセンサー(RIG-I)、IFN誘導遺伝子(ISG15)、アダプター分子(IPS-1)、抑制系遺伝子(RNF125)及びIFNλ(IL28)の治療前肝組織における遺伝子発現を解析し、IL28B SNPと治療効果との関連を検討した。またTVR単独投与例(n=5)では、治療前・中におけるHCV動態を経時的に解析し、さらにPBMC中の遺伝子発現プロファイルをリアルタイムPCR法およびDNAマイクロアレイを用い25,000の遺伝子発現について網羅的に解析した。 【成績】IL28B minor例のRIG-I、ISG15の遺伝子発現はmajorに比し有意に高値であったが、IPS-1及びRNF125はIL28B minorで低かった。一方、IFNλ遺伝子の肝内発現にはIL28B SNP別に有意差がなかった。治療効果別では、NVR例では治療中ウイルス反応(VR)が得られた症例に比し有意にRIG-I、ISG15の遺伝子発現が高値、IL28B minorに限ってもNVR例ではVR例に比し有意に高値で、多変量解析ではRIG-I高発現がNVRに独立して関与していた。DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析において、発現変化量>1.2かつp<0.01を条件とした599プローブのパスウェイ解析では、TVR投与により抗原提示、NK細胞およびToll-like receptorシグナル伝達に関わる遺伝子群の発現の低下を認めた(p=1.2×10^<-4>, 5.6×10^<-3>, 2.3×10^<-3>)。 【結論】RIG-I/IPS-1系はPEG-IFN/RBV併用療法におけるNVRにウイルス因子と独立して関与していた。TVR投与により自然免疫系遺伝子の発現プロファイルは動的に変化し、TVRによるHCV抑制に自然免疫系は密接に関与していることが示唆された。IFNλ(IL28)の肝内発現はIL28B SNPやα型PEG-IFNを用いた治療効果との関連が乏しく、今後IL28B minor症例におけるλ型IFNによる治療反応性が期待される。
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