研究概要 |
肝前駆細胞は胎児肝の約10%を占め、高度の増殖能を有し、継代も可能であった。肝前駆細胞は、肝細胞(albumin、α1AT、AFP)、胆管細胞(CK19)由来の遺伝子を発現し、免疫染色にてコロニーの中心部はalbuminに、周辺部はCK19に強く染色され、多分化能を獲得していた。培養5日後の肝前駆細胞にHNF-4遺伝子を導入したところApoAl, ApoCIII mRNAなどの脂質代謝関連遺伝子、薬物代謝を制御するPXR mRNAの増強が認められた。HNF4導入後、経時的にalbumin mRNAをNorthern blotにて検討したところ、albumin mRNAは導入2日後に発現増強が認められるようになり、7日後にはコントロールと比較し高い発現が維持されていた。 GFPTgマウス由来の胎児肝前駆細胞にHNF-4遺伝子を導入し細胞移植したところ、移植4W後にGFP細胞の生着が確認され、GFP陽性細胞はFACSの解析にて宿主細胞の約5%を占めていた。繊維化マーカー(hydroxyproline)は、コントロール群、LacZ群とHNF-4群の肝組織において有意差は認められなかったが、HNF-4群で軽度低下していた。宿主肝での遺伝子発現をNorthern blot法にて検討したところ、HNF4群でHNF4,ApoA1,糖代謝関連遺伝子PEPCK mRNAの発現上昇が認められた。マウスの生存率をKaplan-Meierにて検討したところ、コントロール群と比較してHNF-4導入細胞移植群に生存率の向上(p=0.004)が認められた。またHNF-4細胞を移植することで血清albumin,中性脂肪ならびに血糖値に改善が認められた。 以上の結果より、HNF-4発現誘導は、肝前駆細胞の肝細胞への分化を促進し、HNF-4遺伝子を導入した肝前駆細胞は、細胞移植医療への応用に有用であると思われる。
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