現在まで当科に保存されている、正常者、慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者血清からタンパクを抽出した。我々は、2D-μHPLC-MALDI-TOF-MS(質量分析計)を用いたハイスループットの検出系をすでに確立しており、この系を用いて解析する。病期が進展するのに伴い、特に低分子のペプチドの発現をプロファイリングした。特に癌化との関連ペプチドに注目した。B型肝炎およびC型肝炎別にも検討する。具体的には以下の方法を用いた。 <2D-μHPLC-MALDI-TOF-MS> 血清サンプルを前処置後SCXおよびC18カラムを用いた2D-μHPLCにより6×190=1140の分画に自動装置によってわける(AccuSpot)。それぞれの分画を質量分析計(AXIMA CFR plus:reflectron mode)にかけ、結果をディファレンシャル解析ツールにより解析した。その後に再調整することなくMS^n測定により、タンパク・ペプチドの構造決定をした。これらの一連の過程はすべて自動化で施行している。(自動多次元タンパク質MSプロファイリングシステムを共同で開発した)。本法によって、包括的かつ網羅的なプロテオーム解析が可能になるが、検体処理速度は1週間に2検体が可能である。本研究では特に質量5000以下のペプチドを中心に網羅的に解析する。 この結果多数の疾患特異性ペプチドを同定することが可能であった。特に、神経ペプチド受容体や、膵酵素関連マーカーなど肝癌と慢性肝疾患を判別できる多数のマーカーを同定した。さらに、そのペプチド自体に糖鎖修飾がみられることが判明した。この糖鎖マーカー自体も慢性肝疾患の進展に深く関わっていることが推測された。
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