研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き、肝細胞癌、肝硬変、慢性肝炎の血清サンプルを用い解析し、有用なペプチド断片を多数同定した。その結果、肝疾患進行のマーカーとしITIH4のペプチド断片を同定した。免疫組織染色により肝細胞癌組織にITIH4が発現することも確認した。このペプチドをマーカーとして利用することでALT正常の慢性肝炎をROC=0.9の感度で検出することが可能であった。また、肝細胞癌と肝硬変はROC=0.7)の感度で分離可能であった。AFPやDCPなどの既存のマーカーと組み合わせることにより、感度、特異度もさらに上昇させうることを明らかにした。また本マーカーはNASHなどの脂肪性肝疾患においても上昇することを見いだした。 一方、このペプチド断片は二次元電気泳動のパターンから、10のvariantsに分離され、多段階質量分析により、糖鎖修飾の差異に起因することが明らかとなった。HCC113例、LC100例、慢性肝炎102例における検討で、これら10のpeptide variantsはそれぞれ異なる動態を示し、中でもvariant9、10はHCCへの進展とともに特異的に発現レベルが上昇していた。本年は本糖鎖についての構造解析を施行した。その結果、この糖鎖は多数繋がったものであり、肝疾患が進行するにしたがって全長が長くなっていることを証明した。 さらに本年度は上記マーカーの有用性のVaridationを施行し、C型慢性肝炎の診断および肝癌の診断に有用であることを証明した。特に、AST,ALT正常の慢性肝疾患においても感度高く肝病変の存在を明らかにすることが可能であった。さらに、糖鎖マーカーのおいても、早期癌の診断能にすぐれており、予後のも関係することを明らかにした。今回同定したペプチドおよび糖鎖修飾は、慢性肝疾患のみならず肝細胞癌における有用なマーカーであることが示唆され、既存の腫瘍マーカーと組み合わせることにより初期肝癌の診断能が上昇すると考えられた。さらに、予後推定や治療法選択におも応用範囲が拡大できることが期待される。
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