研究課題
蛋白質のモノユビキチン化はポリユビキチン化が蛋白質を分解の方向にターゲットするのに対して、その蛋白質の機能変換シグナルとして機能している。がん遺伝子産物であるガンキリンのモノユビキチン化は、ガンキリンによる細胞癌化の働きを変化させる可能性があると考えられる。肝臓がん細胞株Huh7によるin vivoでのユビキチン化、nedd8化、ISG15化をウエスタンブロットで確認したところ、ガンキリン分子はモノユビキチン化、モノnedd8化、モノISG15化されていた。in vitroのユビキチン化、nedd8化、ISG15化のアッセイ系でも同様の結果を得た。ガンキリンのモノユビキチン化、モノnedd8化、モノISG15化をうけるリジン残基はすべて同じ16個のリジン残基のうちのN端から10番目のリジンであった。モノユビキチン化は非ストレス下でも起きる。モノnedd8化は特に酸化ストレス下でよく起こる。モノISG15化はインターフェロン刺激時に起こることが判明した。しかし、ガンキリン分子はSUMO1、2、3化やURM1化は受けなかった。Rat embryonic fibroblastを用いて、ガンキリンとモノユビキチン化、モノnedd8化、モノISG15化ガンキリン(C端にユビキチン、nedd8、ISG15を一個融合したガンキリン)の癌化能を比較した。モノユビキチン化、モノnedd8化、モノISG15化ガンキリンのp53やpRBタンパクの分解に与える影響、p16INK4aのcdk4への結合阻害への影響、細胞内での局在の変化、E3(MDM2)との結合の変化、転写因子NFkappaB(RelA)の活性化抑制に対する効果を調べた。プロテアソーム結合タンパクとしてのガンキリンのモノユビキチン化、モノnedd8化、モノISG15化は26Sプロテアソームの機能(ペプチドやモデルタンパクの分解)にどのような影響を与えるのかを検討した。癌化能はモノnedd8化ガンキリンのみが野生型に比べて、亢進していた。逆に、モノユビキチン化ガンキリンは癌化能が野生型より抑制された。モノISG15化ガンキリンは全く差がなかった。モノユビキチン化ガンキリンはタンパク分解を受けやすく、野生型ガンキリンより不安定となった。モノnedd8化ガンキリンはp53よりpRBのほうにより結合しやすく(複合体を形成しやすく)、MDM2の基質特異性を変化させ、pRBをより分解する傾向を示した。モノISG15化ガンキリンは検討した限り、野生型のガンキリンとの差異は見いだせなかった。融合分子ではなく、in vivo、すなわち、肝臓がん細胞株中で形成されるモノユビキチン化、モノnedd8化、モノISG15化ガンキリンをFLAG-tagged gankyrinとHA-tagged ubiquitin、HA-tagged nedd8、HA-tagged ISG15を過剰発現させ、免疫沈降をanti-FLAG antibody、anti-HA antibodyで2度行うことで、タンパク精製し、そのタンパクを用いた解析を行う必要がある。
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