研究概要 |
22年度も計画書に従い、糖鎖解析技術を用いた脂肪肝の病態解析に関する研究を行った。基礎研究に関して以下の2点の成果を得た。 1. マウス肝癌細胞Hepal-6の培養液中に、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を添加したところ、前者において細胞死の誘導がより強く見られた。このとき、両者の細胞で誘導される遺伝子を、糖鎖遺伝子のアレイで解析したところ、興味あることに約2,500掲載されている遺伝子の中で有意に変化したものはMCP-1 (Monocyte Chemotactic Protein-1)のみであった。MCP-1は単球の走化性因子として同定されたが、その後、単球活性化因子や好塩基球による化学伝達物質の遊離促進、T細胞走化性活性等が報告されている。アレイの結果を確認するためにリアルタイム定量PCRでMCP-1の発現を確認中である。 2. 糖転移酵素の中で、最もがん化に関係が深いGnT-V (N-アセチルグルコサミン転移酵素V)のトランスジェニック(Tg)マウスに高脂肪食を負荷したところ、野生型マウスに較べてTgマウスでは脂肪肝に続発する炎症細胞の浸潤と線維化が、有意に抑制された。脾細胞サイトカインプロファイルではTgマウスにおけるTh2型へのシフトが認められた。また、Tgマウスの肝星細胞においてTGF-betaシグナルの増強が認められたにもかかわらずI型コラーゲン発現が低下しており、その機序として、COX-2/PGE2経路を介したコラーゲン産生抑制作用が考えられた。以上からGnT-Vは、高脂肪食負荷において炎症抑制作用や肝星細胞に対する直接作用を介して肝線維化を抑制したと考えられた。
|