C型慢性肝疾患では肝線維化の進行とともに肝発癌率が高くなり、肝硬変では年率7~8%と非常に高いことが知られている。本研究では肝線維化および肝発癌と機能的遺伝子多型との関連を検討してきている。 本年度は抗炎症性サイトカインIL-10の-1087A/Gと-824T/Cの機能的遺伝子多型を184例のC型慢性肝疾患で解析した。その結果、慢性肝炎と肝硬変の間で多型頻度に差を認めなかったが、肝硬変患者では転写活性の低い-1087Aホモ型、-824Tホモ型で肝実質障害が強いことが明らかにされた。また、細胞外マトリックス分解酵素の生物学的活性を調整しているTIMP-2の-418G/Cの機能的多型の解析では、慢性肝炎と肝硬変で多型頻度に明らかな差を認めなかったが、肝硬変患者では転写活性の高い-418Gホモ型で肝硬変自体の病変進行が強いことが示された。慢性肝炎で肝線維化速度別で検討すると、-418Gホモ型で線維化速度が速いことが示された。 肝細胞癌92例で細胞外マトリックス代謝関連酵素およびサイトカインの機能的遺伝子多型を解析し、臨床病理学的所見と予後との関連を検討した。その結果、TGf-b1+869CキャリアとMMP-35Aキャリアで肝細胞癌の診断時サイズが有意に大きいことが明らかにされた。また、IL-1b-31Tホモ型、MMP-35Aキャリアでは肝細胞癌の予後が明らかに不良であることが示された。
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