研究課題/領域番号 |
20590783
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山崎 隆弘 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (00304478)
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研究分担者 |
寺井 崇二 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00332809)
山本 直樹 山口大学, 大学教育機構, 講師 (90448283)
坂井田 功 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80263763)
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キーワード | 肝細胞癌 / 鉄キレート剤 / Deferoxamine / Deferasirox / 肝発癌ラットモデル |
研究概要 |
鉄キレート剤であるDesferoxamine(DFO)は、慢性鉄過剰症に対して用いられる薬剤であるが、以前より抗腫瘍効果についての有用性が報告されている。肝癌に関する基礎的検討の報告は少なく、分担者の坂井田は、以前基礎的検討により、 CDAA (Choline-deficient L-amino acid-defined diet:コリン欠乏食)ラットに鉄キレート剤であるDesferoxamine (DFO)の投与することで、肝機能の改善および前癌病変が減少することを報告している。今までの基礎研究で我々は、DEN (Diethylnitrosamine)やCDAA (Choline-deficient L-amino acid-defined diet:コリン欠乏食)などを用いて、ラット肝発癌モデルを作成し研究していたが、今回それらの併用により短期間で肝発癌をきたすモデルを開発し詳細な検討を行い、さらに発癌後通常食投与期間を取ることにより、背景肝障害が少ないモデルの作成にも成功した。ネンブタール麻酔下でDFO (Deferoxamine)を尾静脈より100mg/kgを週3回投与し、8週間投与後、非投与対照群と比較した。8週投与で死亡したラットはいなかったが、DFO投与群では非投与群と比べ、体重、肝重量が有意に軽かった。また試験開腹し、肉眼で判明する腫瘍径を計測したところ腫瘍径に関してはDFO投与群で有意な縮小は認めなかったが、非投与群と比較し腫瘍の増大は有意に抑制された。またこのモデルで餌にDeferasirox(Exjade)を混在し投与し同様な手法で検討したところ、腫瘍の増大は有意に抑制していた。またDENによるマウス発癌モデルでもDFOによる発癌抑制効果を検討し、腫瘍の増大は有意に抑制されていた。今回、様々なラット肝発癌モデルでの検討では血液データ上は腎機能障害やTransaminaseの有意な変化は見られなかったが、肝重量が著明に減少しており、肝萎縮をきたしていると考えらた。DFO等の鉄キレート剤は従来の抗腫瘍剤ではなく、DNA障害などは少なく、より特異的に作用する可能性があり、従来の抗腫瘍薬抵抗性進行肝癌に対し、新たな抗腫瘍効果が得られる薬剤である可能性を今回の研究で認めることができた。
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