これまで我々は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病因におけるKupffer細胞の機能異常の重要性について報告してきた。本年の研究目的である「(1)貪食能低下と炎症性サイトカイン過分泌の2面性機能異常を持ったKupffer細胞の病態解析」については、NASH患者およびNASHモデルラットについてSPIO-MRIの手法を用いることにより、NASHではKupffer細胞からのTNF-αなどのサイトカインの分泌は過剰になっているにも関わらず、その貪食能は低下していることを明らかにし高い評価を得た(GUT、EASL2009)。さらに、Kupffer細胞の貪食能低下はNASHの進行度とは関連がなく、むしろ肝の脂肪化と関連が高いことを明らかとし、このことが単純性脂肪肝からNASHへの進展に重要な要因となっていることを明らかとなった。さらに、肝が脂肪化を起こすことでKupffer細胞は多くの脂肪滴を貪食することとなり、貪食能が低下することもあきらかとなった(未発表データ)。 さらに、もう一つの本年の研究目的である、「(2)NASHの病態におけるKupffer細胞toll-likereceptor4(TLR4)の活性化と貪食能低下の関連」については、TLR4に変異があるC3H/HeJ miceでは肝の脂肪化刺激にても脂肪肝は来さず、蛍光ビーズの静脈内投与によるKupffer細胞貪食能の評価でも正常肝Kupffer細胞の貪食能と比べ低下していないことが明らかとなった(未発表データ)。TLR4変異C3H/HeJ miceマウスでは、肝内におけるTNF-αなどのサイトカインの分泌は亢進しておらず、貪食能の低下とサイトカイン分泌能には深い関連があることが想定される結果であった(未発表データ)。
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