研究概要 |
本年度は酸化ストレスマーカーとして同定した蛋白の臨床的意義、および脂肪肝モデルを用いた病態解明を行った。(1)酸化ストレス負荷でヒト肝細胞に発現上昇するタンパク質を4種類(MnSOD、COX6B1、CES1及びCPS1)同定した。また、単純性脂肪肝(SS)に比べ非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では血清MnSOD濃度とASTが有意に高値で、血小板数とChEは有意に低値であった。また、NASHとSSの鑑別において、これらのマーカーのROC下面積、感度、特異度はMnSOD(0.76、69%、80%)、 AST(0.73、66%、73%)、血小板数(0.73、66%、87%)、ChE(0.69、48%, 87%)であり、血清MnSODが最もROC下面積と感度が高かった。さらに、血清MnSOD濃度はNASHの肝線維化ステージの進行に伴い上昇する傾向であった。(2)原因の異なる脂肪肝動物モデルを用いて、脂肪肝と高血圧の関連、および脂質代謝異常と糖代謝異常により誘導される脂肪肝における肝再生の相違を比較検討した。今回用いた動物モデルでは、高血圧は脂肪肝と肝線維化の病態進展には関与しない可能性が考えられた。一方、肝切除後の肝再生率は肝脂肪化の程度とは相関せず、脂肪肝の原因が肝再生率に関連すると考えられ、合併する生活習慣病の違いによりNAFLDの病態やその進展は異なる可能性が示唆された。
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