研究課題
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のプロテオミクスで同定した分子が生活習慣病の一つである高血圧と関連することから、生活習慣(病)とNAFLDとの関連を検討した。(1)生活習慣病と関連する喫煙がNAFLDに与える影響を解析した。1998年と2008年に人間ドックを受診し、B型・C型肝炎の感染がなく、1日アルコール摂取量がエタノール換算で20g以下の2029名を対象とした。1998年に1560名がNAFLDではなく、そのうち266名が2008年にNAFLDと診断された。新規NAFLDに寄与する因子を多変量解析すると、喫煙はNAFLD発症の独立した危険因子であり、喫煙指数が増加するとNAFLDの発症リスクが高くなった。また、喫煙者が禁煙した場合には、禁煙後の体重増加もNAFLD発症に関与する可能性が示唆された。(2)高フルクトース食もしくは高脂肪食でラットに脂肪肝を作製し、さらにジエチルニトロサミン(DEN)を投与し、脂肪肝と肝発癌の相違を比較検討した。今回のモデルでは、明らかな肝癌は出現しなかったが、脂肪肝の程度が軽い高フルクトース食による脂肪肝の方が、脂肪肝の程度が高度の高脂肪食による脂肪肝より、肝の前癌病変と考えられるGST-P陽性肝細胞は増加していた。すなわち、脂肪肝の程度よりは脂肪肝の原因の方が、肝発癌に関連する可能性が示唆された。(3)高血圧モデル動物に高フルクトース食、高脂肪食もしくはコリン欠乏アミノ酸置換食(CDAA)を投与して脂肪肝を誘導し、高血圧と脂肪肝との関連を検討した。高血圧は脂肪肝の発症や脂肪沈着の程度への関与はほとんどなかったが、高血圧は肝障害を増悪させた。以上のように、本研究では、合併する生活習慣(病)の違いによりNAFLDの病態は大きく異なる可能性を明らかにした。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 407 ページ: 163-168
J Gastroenterol
巻: (In press)
J Gastroenterol.
Proteome Sci.
巻: 31 ページ: 70