1. HBVの細胞傷害機構の解明 (1)ヒト肝細胞置換キメラマウスにHBVを感染させ、病態進展に関わる因子を病理学的及び分子生物学的手法により既に同定しており、今年度はHBV感染が成立したキメラマウス肝臓を経時的にcDNAマイクロアレイで解析し発現遺伝子の動態を確認した。また免疫不全下でのHBV感染により自然免疫系の働きとその変化を解析し、特にHBVの持つ病原性発現機構に関しては検討を重ね、獲得免疫系を介さずに肝傷害が起こることを示し、これらの結果はHBVには細胞傷害性がないと言われてきた定説を実験的に覆すものであり移植後肝炎モデルとなり得ると分かった。 (2) HBV変異による肝発癌メカニズムを明らかにするために、トランスジェニックマウス(TGマウス)により解析をした。本邦に多く見られるHBV遺伝子型Cでは、既知のBCP変異(A1762T/G1764A)に加えて、X蛋白変異を伴うC1653T変異が肝細胞癌へ寄与する独立因子であることを示した。上記の2領域の変異の有無で組み合わせを作り、それぞれの変異X遺伝子を導入したTGマウスをすでに作製し解析を開始した。 2. HBV感染・複製機構の解明 (1)複製メカニズムの解明-HBV遺伝子型の違いがウイルス複製やウイルス蛋白合成の違いとして現われている。HBV遺伝子型の違いは様々あるが、最も複製効率に寄与する因子がHBVコア蛋白質の違いであることを示す予備データが得られていた。今年度は各種キメラクローンを作成して検討した結果、コアプロモーター領域の変異が複製に大きな影響を与えていることがわかった。 (2)複数のHBV遺伝子型もしくはHCVとHBVの共感染を再現し、臨床的に観察される共感染機構を明らかにするため、キメラマウスを用いて検討したが、HCVとHBVの共感染の効率が悪い事が分かった。
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