高密度オリゴヌクレオチド・アレイ解析(伊藤・安居): GeneChip 100K(または250K)アレイ(Affymetrix社)を用いてDNAコピー数を定量した。このアレイは、全ゲノム領域を高密度にカバーする約12万個(または24万個)のSNP特異的オリゴヌクレオチド・プローブを搭載しており、極めて高い分解能で、癌に生じたDNAコピー数変化を定量的に解析することができる。昨年までに肝細胞癌由来細胞株20株を対象にアレイ解析を行った。 本年度は、昨年に引き続き肝癌切除標本より抽出したDNAを対象に加え、アレイ解析を進めた。昨年度の研究で、肝癌切除標本においてもCGHでは検出できなかった新規遺伝子増幅領域1q21領域に新規の遺伝子増幅を検出している。本年、さらに多数例を用いて最小の共通増幅領域(amplicon)を限局化した。また、amplicon内にある遺伝子すべてについてmRNA量を定量し、その発現が亢進している遺伝子(増幅の標的遺伝子)を絞り込んだ。また、臨床検体における結果を肝癌胞癌由来細胞株の結果と比較した。 CREB3L4および新規遺伝解析(伊藤・安居): 現在までの研究で肝臓癌においてCREB3L4遺伝子が増幅かつ発現亢進していることを確認している。CREB3L4(cyclic AMP responsive element binding protein 3-like 4)は、CREB/ATFファミリーに属する転写因子である。本年度は臨床検体での解析を進め、遺伝子増幅に伴うCREB3L4の発現亢進が肝癌細胞に及ぼす影響について、特にどのような下流遺伝子の転写活性を調節しているのかという観点からの検討をすすめた。また、この領域の新たな増幅遺伝子に関する検討を行ったが新規の遺伝子増幅域はみいだせなかった。現在、CREB3L4遺伝子が肝癌細胞のどういった生物学的活性に関わっているのかを明らかにすべく研究を推進している。
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