研究概要 |
我々の開発したHBV-Alu PCR法は,肝組織における微量のHBV組み込みを高感度に,迅速に同定できる方法であり,慢性肝炎組織におけるHBV組み込みの検出にはこの方法が最も優れていると考えられる,このHBV-Alu PCR法を用いて,5例の慢性肝炎組織よりHBVが宿主配列に組み込まれている部位を増幅し,プラスミドにクローニングした,慢性肝炎組織より約100クローンにおいて,HBV組み込みとその近傍のヒトゲノム配列を同定しえた.これらをデータベースにて解析するとヒト染色体上で細胞増殖の際に転写,翻訳が活発であり,癌やウイルス組み込みの際の染色体の欠失や組み換えなどの好発部位とされるcommon fragile siteに存在すると推測されるものが4クローンあった,そこで,これらの組み込み配列をプローブとして,実際に健常リンパ球でのfragile siteにmappingされるかどうかをFISH法にて確認した,さらにHBV組み込みが,common fragile siteに好発することを癌においても確認するため,データベースに報告されている16の肝癌におけるHBV組み込みを検索し,これらがcommon fragile siteにmappingされるかどうかを同様にFISHで解析した. HBV陽性肝癌においては,16例中5例でcommon fragile siteにHBVの組み込みが認められた.また,HBV陽性慢性肝炎組織においては,20例中4例でcommon fragile siteにHBV組み込みがあった.これはHBV組み込みがrandomに起こると仮定した場合より有意に高頻度であり,HBV組み込みがcommon fragile siteに好発することが証明された. また,肝癌のみならず慢性肝炎の段階において,細胞の癌化に関連した遺伝子変異がすでに始まっていることを示唆する所見であった.
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