研究概要 |
HBVは肝癌の90%以上でモノクローナルな組み込みが証明されるが,従来,その組み込み部位には一定の傾向はなく,ランダムに起こるとされていた.しかし,我々が開発したHBV-Alu PCR(Minami et al. Genomics 1995)を用いた方法などPCRを応用した技術の進歩とゲノムデータベースの充実に伴い,解析症例が増加し,HBVのヒト遺伝子近傍への組み込みは稀な現象でなく,Rasシグナル調節,Caシグナル調節,細胞周期,テロメアなどに関連した遺伝子の近傍に好発することが我々を含め,複数のグループより明らかになった. 我々は,さらに,このHBV-Alu PCR法を用いて,慢性肝炎組織よりHBVが宿主配列に組み込まれている部位を増幅し,プラスミドにクローニングした.B型慢性肝炎組織より得られた約100クローンにおいて,HBV組み込みとその近傍のヒトゲノム配列を同定しえた.これらをデータベースにて解析するとHBV組み込みは,ヒト染色体3番に統計学的に有意に高率に存在すること,また,細胞増殖の際に転写,翻訳が活発であり,癌やウイルス組み込みの際の染色体の欠失や組み換えなどの好発部位とされるcommon fragile siteの近傍に多く存在する傾向があることがわかった.そこで,HBV組み込みがcommon fragile siteに好発することを証明するため,組み込み近傍のヒトゲノム配列をプローブとして,これらがcommon fragile site内にmappingされるかどうかをFISHで解析した. 結果,HBV関連の慢性肝炎組織,肝癌組織のいずれにおいてもcommon fragile siteへの組み込みは,HBV組み込みがrandomに起こると仮定した場合より有意に高頻度であり,HBV組み込みがcommon fragile siteに好発することが証明された.
|