研究概要 |
当施設における医の倫理委員会の承認を得た実施計画に基づいて肝硬変患者から無菌的に腹水を採取し、遠心後その沈渣を回収した。回収した沈渣中の有核細胞成分の90%以上が生細胞であることをトリパンブルー染色により確認し、コートされていないプラスチックディッシュ上で(1)10%FBS添加M199培地および、(2)マクロファージ・単球用無血清培地で培養し付着細胞のみを継代した。両群の培養細胞を回収し、フローサイトメトリーで解析したところ、腹膜中皮細胞と考えられるサイトケラチン陽性細胞の割合は(1)で9.8%、(2)で27、5%であった。また、上記(1)(2)の培養系にLPSもしくはIFN-γ添加し20時間後の培養上清中の炎症性および抗炎症サイトカインをマルチプルプロテインアレイで定量した。その結果、LPSおよびIFN-γ添加による培養上清中のIL-6およびIL-8の上昇には(1)(2)の培養系の間に差異を認めなかったが(1)では検出されなかったTNF-αとIL-10の上昇が(2)で認められた。以上より、肝硬変腹水から分離された付着性細胞群における腹膜中皮細胞の占有率の増加と炎症性サイトカインであるTNF-αとそのカウンターバランスを担うと考えられる抗炎症性サイトカインであるIL-10の上昇との関連が示唆され,腹膜中皮細胞と腹腔マクロファージが相互作用して炎症性・抗炎症性サイトカイン産生のプロファイルに影響する可能性が示された。
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