研究課題/領域番号 |
20590794
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
植村 正人 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90151836)
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研究分担者 |
松本 雅則 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (60316081)
福井 博 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80145838)
藤村 吉博 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80118033)
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キーワード | ADAMTS13 / 微小循環障害 / 肝星細胞 / 多臓器不全 / 肝硬変 / 劇症肝炎 / アルコール性肝炎 / インヒビター |
研究概要 |
平成20年度、研究代表者は、肝硬変の重症度が増すに従い血漿ADAMTS13活性が低下し、肝硬変109例中17例(16%)に血小板と最も反応性に富む超高分子量VWFマルチマー(UL-VWFM)が検出されることを見出した。これらUL-VWFM陽性例では腎障害、脳症が高度であり、UL-VWFMの出現は進行した肝硬変の病態形成に密に関与している可能性を指摘した。ADAMTS13活性低下の機序として、本酵素のインヒビターを検出しているが、肝硬変末期では、血漿ADAMTS13活性は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と同程度にまで著減(<3%)し、TTPで検出された抗体と同様のADAMTS13に対するIgG抗体をwesternblotにて証明した。すなわち、TTP合併肝硬変と明らかなTTPの臨床徴候を認めない末期肝硬変を区別することは困難であり、ADAMTS13活性著減、IgGインヒビター陽性の末期肝硬変はTTP類似状態あるいは“subclinical TTP"と言っても過言ではないという結論に達した(Thromb Haemost2008)。さらに、アルコール性肝炎においても血漿ADAMTS13活性は低下し、肝硬変と同程度のインヒビター活性を検出しているが、肝硬変同様、ADAMTS13活性が3%〜50%程度の中等度〜軽度のADAMTS13活性低下例では本酵素に対するIgG抗体を検出しなかった。しかし、本酵素活性低下が血漿サイトカインならびにエンドトキシン濃度と密に関連することを見い出し、これらがADAMTS13活性低下をもたらす抗体非依存性物質として重要な因子であることを指摘した(Alcohol Clin Exp Res2008, Current Drug Abuse Reviews2008)。 なお、肝疾患以外に、重症急性膵炎(SAP)発症早期に血漿ADAMTS13活性は著明に低下しており、本酵素活性の低下が、SAPの重症度ならびに膵灌流障害の一役を担っている可能性を指摘した(Scand J Gastroenterol, 2008)。
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