Mallory-Denk体の形成、分解過程ならびにその細胞生物学的意義に関する研究をin vitroとin vivoの系を使用して行った。In vitroでは、培養細胞を用いてプロテアソーム阻害によりケラチンやユビキチンからなる凝集体が形成されることを我々は既に報告していたが、さらにこの現象とアポプトーシスが関連することを明らかにした。また、細胞のもうひとつの蛋白分解系であるオートファジーをrapamycinを用いて活性化させるとプロテアソーム阻害による異常蛋白の蓄積が減少することを明らかにした。さらにそれらの状態では、凝集体形成とアポプトーシスが回避されることを証明出来た(Exp Cell Res 2008)。 また、in vivoにおいてケラチン8トランスジェニックマウスでは、短期間のプロテアソーム阻害剤投与にて肝細胞内にユビキチン化された蛋白が蓄積し、さらにMallory-Denk体が形成された。その際、マウス肝ではオートファジーが活性化されており、肝細胞内のautophagic vacuoleにはMallory-Denk体の構成成分と思われるケラチンとユビキチン陽性の構造物が免疫電顕にて確認された。また、オートファジーをrapamycinで活性化するとMallory-Denk体の形成が阻害された。これらより、オートファジーは異常蛋白蓄積に体する生体反応でMallory-Denk体の構成成分を分解していると考えられた。さらにMallory-Denk体が形成されても肝機能障害は来さず、Mallory-Denk体の形成は異常蛋白蓄積への生体の防御反応である可能性が示唆された。さらに、オートファジーの調節は凝集体形成を伴う疾患の新たな治療法となる可能性が示唆された(Hepatology 2008)。
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