培養肝癌細胞を用いてプロテアソーム阻害時の肝細胞内凝集体形成、ユビキチン化蛋白蓄積ならびに細胞死に対してオートファジーを調節することによる影響を検討を行っている。トレハロース、スタチンならびにラバマイシンの影響を検討した。すべての薬剤でオートファジーは亢進するが、凝集体形成、ユビキチン化蛋白蓄積ならびにアポプトーシスへの影響はそれぞれの薬剤で異なっており、その機構を現在検討中である。 マウスを用いた検討ではケラチン8トランスジェニックマウスでは、短期間投与でマロリー体(現在はMallory-Denk体に改称された)が形成されることからケラチン8の発現の亢進がMallory-Denk体形成に重要であることを証明した(Med Mol Morphol 2010)。この際ケラチン8の73番目のセリンのリン酸化が重要である事も明らかとした。またマウスの免疫電顕による解析より、Mallory-Denk体の処理にオートファジーが関与していることを報告した(Med Mol Morphol 2010)。現在、さらにマウスを用いてMallory-Denk体形成モデルへのトレハロース、スタチンならびにラパマイシンの影響を検討し、培養細胞の結果を含めてその効果を検討中である。 ヒトにおいては、各種肝疾患において診断のための肝生検組織を用いてMallory-Denk体をケラチン、ユビキチンならびにp62の免疫染色で調べ、酸化ストレス、小胞体ストレス、細胞増殖、アポプトーシスならびにオートファジーとの関連を検討している。それによりC型慢性肝炎においては高率にMallory-Denk体が見出されることが分かった。現在慢性ウイルス性肝炎でもウイルス感染に対しての反応が、B型肝炎とC型肝炎では全く異なっている可能性を見出している。またC型慢性肝炎では細胞のストレスへの反応とペグインターフェロン・リバビリン併用療法への感受性が関連している可能性を見出して来ている。
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