研究概要 |
肝細胞におけるMallory-Denk体(MDB)の細胞生物学的意義は不明である。本研究では培養細胞、マウスモデルならびにヒト肝組織を使用してそれらを検討した。培養細胞においてプロテアソームの機能を阻害するとユビキチン化蛋白が蓄積し、MDBが形成されて小胞体ストレス、酸化ストレスならびにアポプトーシスが誘導された。これらはラパマイシンのみならずトレハロースによるオートファジーの調節で避けることが可能であった。 マウスを用いた検討ではケラチン8トランスジェニックマウスでは、短期間のMDB誘導薬の3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine(DDC)投与でMDBが形成され、ケラチン8の発現の亢進がMDB形成に重要であった。またマウスの免疫電顕による解析より、MDBの処理にオートファジーが関与していると考えられた。DDC肝障害においても小胞体ストレスや酸化ストレスが関与することを明らかとした。DDC投与マウスへラパマイシンやトレハロースを投与するとユビキチン化蛋白の蓄積は抑えられたが、肝細胞障害は抑制されなかった。この詳細は現在も検討中であるが、肝障害にautophagic cell death等が関与している可能性も考えられた。 ヒトにおいては、各種肝疾患において診断のための肝生検組織を用いてMDBの形成、ユビキチン化蛋白の蓄積、酸化ストレス、小胞体ストレス、細胞増殖、アポプトーシスならびにオートファジーとの関連を検討している。酸化ストレス、小胞体ストレス、オートファジーの程度には差がないが、C型肝炎には高率にMDBが見出されることB型肝炎では細胞増殖が速いなどの特徴があり同じウイルス性肝炎でも病態が異なることが示された。またC型肝炎では細胞のストレスへの反応とペグインターフェロン・リバビリン併用療法への感受性が関連している可能性が示された。
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