平成20年度はラット膵星細胞において、培養による活性化に伴うマイクロRNAの発現変化につき検討した。Wistar系雄性ラットの右頚静脈からコラゲナーゼを灌流後、膵臓を摘出し、ナイコデンツを用いて膵星細胞を分離した。分離翌日の未だ静止期にある膵星細胞と、血清を含む培地で2週間培養し、筋線維芽細胞様に形質変換した膵星細胞からマイクロRNAを抽出した。両者間のマイクロRNAの発現プロファイルの差をラットマイクロRNAアレイにより解析した。リアルタイムPCRにより、発現の差異の定量性と再現性を確認し、培養により発現が増強または減少するマイクロRNAを同定した。 一方、膵癌ならびに慢性膵炎切除標本の膵線維化部位からマイクロRNAの分離、抽出を行った。すなわち、パラフィン包埋組織より厚さ8・mの切片をマイクロトームで薄切し、あらかじめフィルムの貼ってあるスライドグラスに乗せレーザービームによるmicrodissection用切片を作成した。切片はキシレンにて脱パラフィン処理を行い、アルコールで洗浄後、H&E染色を行い、その切片からレーザービームにて目的の病変のみを削りだした。これよりマイクロRNAを分離した。同様にヒト膵癌患者切除膵よりヒト膵星細胞を分離・培養した。ラットマイクロRNAアレイにて拾い上げた発現差異のあるマイクロRNAについて、ヒト膵星細胞においても発現変化が見られるか検討し、一部につき確認した。以上より、膵星細胞の活性化に伴い、広汎なマイクロRNA発現変化がおこることを見出だした。これらのマイクロRNAにつき次年度以降、機能解析を予定している。
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