研究概要 |
平成22年度は引き続き膵星細胞の活性化に関わるマイクロRNAの同定を行った。Wistar系雄性ラットから分離した膵星細胞のマイクロRNAプロファイルを、分離翌日の未だ静止期にある細胞と、血清存在下で2週間培養することにより活性化した細胞間で比較した。その結果、活性化に伴いmiR-100、miR-128、miR-143の発現が上昇する一方、miR-126、miR-200の発現手低下が認められた。現在、これらの活性化に関わる意義につき、強制発現系ならびに抑制系を用いて解析を進めるとともに、ヒト膵星細胞の活性化においても同様に関与するか、検討を進めている。 一方、膵星細胞の膵疾患における意義についても検討を行い、1)膵星細胞は新しいIL-1ファミリーの一つであり免疫調節機能を有するとされるIL-33を核に発現することならびにIL-33が血小板由来増殖因子による膵星細胞増殖に関与すること、2)膵星細胞が膵癌細胞のepithelial-mesenchymal transition(EMT,上皮間葉転換)を誘導すること、3)膵星細胞がβ1-integrinシグナル系を介して膵癌細胞の放射線感受性を減弱させることを、それぞれ明らかにした。このうち膵星細胞による膵癌細胞のEMT誘導は、膵癌細胞の浸潤・転移能を増強すること、放射線感受性の減弱は、膵星細胞が膵癌に対する放射線治療の効果低下をおこし、治療抵抗性につながる可能性を内外に先駆けて初めて明らかにしたもので、臨床上も大きな意義を持つと考えられる。
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