研究概要 |
自己免疫性膵炎は膵癌と臨床像が類似し、血清IgG4高値、リンパ球浸潤を伴う著明な線維化、ステロイドに対する良好な反応性などの自己免疫所見を呈し、涙腺・唾液腺炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などの様々な膵外病変を合併する、特異な慢性膵炎である。われわれは本疾患の病態に関連する遺伝子を検索する目的で、ゲノムワイドなマイクロサテライトマーカーを用いて全染色体を対象とした相関解析を施行した。その結果、6種の感受性アレルを同定し、有望な感受性遺伝子の一つとしてDIS2726近傍に存在するカリウムイオンチャンネル蛋白、Kv1.3(KCNA3)を見出した。今回、KCNA3の4種のSNPs(rs2840381, rs1058184, rs2640480, rs1319782)が自己免疫性膵炎と有意な相関を示すことを確認した(P<0.02, Pc<0.1)。さらにこれらSNPs間で連鎖不平衡を示すhaplotype block, GACCが自己免疫性膵炎と有意な相関を示した(P=0.0014, odds ratio=2.45)。Kv1.3(KCNA3)はT-cellの膜電位やCa-signalingに関与し、T-cellの活性化や増殖を調節していると考えられている。Effector memory T-cellに強く発現し、病変局所で種々のサイトカインを産生して、自己免疫性疾患の発症に関与していると考えられる。今回の結果からKv1.3(KCNA3)が自己免疫性膵炎の発症機序に関与している可能性が考えられた。
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