試験開始から現在まで5名が登録された。試験は当初のプロトコールに準じて施行されてる。Case1は64歳女性、PS:0、膵頭部癌。樹状細胞局注療法11回実施後にPDと判定され以後はTS-1療法を実施。治療開始時から353日の生存が得られた。Case2は70歳男性、PS:0、膵頭部癌。樹状細胞療法を8回実施した時点でPDと判定された。その後TS-1療法を実施し、治療開始時から543日の生存が得られた。Case3は49歳男性、PS:0、膵体部癌。樹状細胞局注療法を12回実施、その後本人希望にて無治療。310日の生存が得られた。Case4は69歳女性、PS:0、膵体部癌。樹状細胞局注療法12回実施。その後TS-1療法実施中であり、病状は安定している。Case5は67歳男性、PS:0、樹状細胞局注療法4回実施後、発熱等あり樹状細胞局注療法は中止。その後ジェムザールによる治療を実施中で、病状は安定している。今後、さらに5例の追加症例を予定している。 本試験中に超音波内視鏡検査にて採取された腫瘍おすび周囲リンパ節からはCD8positiveリンパ球の増加が確認されている。一方、免疫反応においでは制御性T細胞(regulatory T cell)の存在が腫瘍の局所免疫反応に影響することが知られている。近年、転写因子Foxp3がCD4+CD25+Tregの特異的な分子マーカーであることが解明された。このCD4+CD25+Foxp3+Tregの数的あるいは機能的亢進が担癌患者で認めちれているとの報告がある。今回の検討では、前述CD8positiveリンパ球だけでなく、Fox3pの免疫染色も実施し、Foxp3positiveリンパ球が少数であることが確認されている。このことは、本治療法は、局所免疫反応においても患者有利に向かっていることを示唆するものであり、非常に興味深い所見であると考えている。 また、膵癌の生物化学的性質を検索し、治療への感受性および耐性遺伝子を検索する目的で実施中の網羅的遺伝子解析も前回の報告通り実施中である。現時点では良質のサンプルの蓄積が必要で、症例数のさらなる増加を待って統計学的解析を実施する予定である。
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