研究概要 |
近年、種々の局所臓器における慢性炎症疾患に対するFractalkine/CX3CL1の関与が明らかになっている。 しかし、現在まで慢性膵炎におけるFractalkineの関与は検討されていない。【目的】慢性膵炎進展におけるFractalkineの関与を明らかにする目的にて、DBTC慢性膵炎ラットモデル、膵星細胞(PSC)、および慢性膵炎患者血清を用いて検討した。【方法】(1)DBTC慢性膵炎ラットモデルを作成し、DBTC投与1週後、2週後、および4週後の膵組織中membrane type Fractalkine(m-FRA)および血清中soluble type fractalkine(s-FRA)を測定した(in vivo)。(2)ラットより膵を単離し、密度濃度勾配法を用いPSCを分離・培養した。 PSC培養上清にLPS(0,1,10,100ng/ml)を添加し、経時的にPSCおよび上清を回収後、PSC上のFractalkine mRNAの発現をRT-PCRにて、上清中のs-FRAをELISA法にて測定した(in vitro)。(3)慢性膵炎患者の血清s-FRAをELISA法により測定した。慢性膵炎患者群を重症度分類し、血清s-FRAとの関連を解析した。【成績】(1)DBTC慢性膵炎ラットの膵組織中m-FRAおよび血清中s-FRAは2週群をピークに上昇した。(2)PSC上の Fractalkine mRNAは発現しており、その発現は用量依存性に増加した。また、LPS投与後6時間後にピークを示した。さらに、PSC上清中のs-FRAは、LPS投与後48時間後にピークを示した。(3)慢性膵炎患者の血清s-FRAは慢性膵炎軽症群に有意な上昇を認めた。【結語】慢性膵炎の病態、特に進展早期にFractalkineが関与している可能性が示唆された。来年度より、さちに検討を加えていく予定である。
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