研究概要 |
消化器癌細胞株における癌幹細胞分離・培養及び機能解析に関する検討を行った。膵癌細胞においては、side population (SP)細胞が非SP細胞と比較して、(1)腫瘍形成能及びコロニー形成能が高いこと、(2)抗がん剤(5-fluorouracil, cisplatin)あるいはアポトーンス誘導分子(tumor necrosis factor-related apoptosis inducing ligand, TRAIL)に対する抵抗性が高いこと、(3)in vivo転移モデルにおける転移能及びin vitro invasion assayにおける浸潤能が高いこと、(4)転移浸潤の過程において重要なプロセスであるepithelial-to-mesenchymal transition (EMT)を起こしやすい性質を有すること、を見い出した。現在、膵臓癌SP細胞を治療標的とするための標的分子のスクリーニング解析を行っている。また、大腸癌細胞においては、培養細胞からのCD133陽性細胞分画の分離・解析を行ったが、shore形成能あるいは腫瘍形成能において明らかな差が認められず、現在別の分子マーカーを探索している。候補分子として、ケモカイン受容体であるCXCR4が癌幹細胞マーカーとして有用である可能性があり、現在解析を進めている。さらに、肝細胞癌においてもSP細胞分画でありかっCD133陽性の細胞群が、sphere形成能及び腫瘍形成能において優れ、癌幹細胞の性質を有することが明らかになっている。癌幹細胞は腫瘍を構成する癌細胞のうちのごく一部の細胞群であり、自己複製能および分化能を有し、アポトーシス抵抗性を有するため腫瘍の再発に大きな役割を果たす。本研究の結果により、遠隔転移や局所浸潤においても癌幹細胞が重要な役割を果たすことが示唆され、癌根治のため、あるいは癌進展抑制のための治療戦略として、癌幹細胞を標的とした治療の重要性が示唆された。
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