研究概要 |
(1) 自己免疫性膵炎のヒトおよび動物組織の免疫学的・分子生物学的解析 平成20年度にて作成したモデルマウスやWB/Kobラットの膵・胆管・肝組織におけるTh1・Th2バランスをIFN-γ, IL-4, IL-5、のプライマーを用いてreal time PCRにて検討した。TregとIL-10はCD4、CD25、FoxP3に対する抗体による免疫染色にて検討した。病変部ではTh1、Th2ともに発現していたが、ICOS陽性FoxP3陽性Tregの浸潤を認めたことより、末梢組織ではIL-10産生Tregが病態形成に関与する可能性が示唆された。 (2) ヒトおよび自己免疫性膵炎動物モデル(胸腺摘出マウス、poly-IC投与マウス、AIP自然発症WB/Kobラット)の病理組織学的・免疫学的検討。 ヒト、胸腺摘出マウス、poly-IC投与自己免疫性マウスの膵・胆管では明らかなFoxP3陽性細胞(Treg)の浸潤も認めるとともに、IL-10の発現増強を認めた。 (3) 膵炎自然発症WB/Kobラットにおける制御性T細胞、免疫担当細胞の解析と骨髄由来幹細胞の移入による発症阻止実験を行った。 WB/Kobラット・では膵炎だけでなく、胆・唾液腺炎などの外分泌腺炎を自然発症することが病理組織学に確認でき、さらにTregとIL-10、IL-17、TGF-β産生細胞などの免疫担当細胞をフローサイトメトリーと共焦点レーザー顕微鏡を用いて経時的に検討した。また、WB/Kobラットを用いたモデルでは同系ラットの骨髄由来幹細胞を移入することにより、膵炎、胆管炎などの発症が抑制でき、Tregの減少が病因に関与すると思われた。 以上より、Tregの増加、IL-10発現増強が自己免疫性膵炎の病態に関与することが示唆された。
|