左心耳機能を経胸壁心臓超音波法を用いて詳細に評価し、日常臨床レベルで解析可能な、心原性脳塞栓の診断と再発予測指標を確立することを目的として本研究は計画された。具体的には、経胸壁心臓超音波法を施行する際に、新しい心内膜トレースキットと組織ドプラ法を用いて左心耳尖端の壁運動速度を描出し、経食道心臓超音波法との対比を介して、簡易で有用な左心耳機能低下指標を確立することを目的とした。次に、確立された左心耳機能指標の低下群における予後を前向きに調査し、脳梗塞再発やその他の血管イベントとの関連性を調査することを第二の目的とした。本法の確立は、ERにおける心原性脳塞栓の診断、及び再発予防のための経過観察の面からも臨床的に極めて重要な課題と考えられた。 平成21年度:脳梗塞の塞栓源検索を目的として経胸壁心臓超音波法が施行された50例の左心耳尖端壁速度測定法の妥当性を、経食道心臓超音波法との対比を介して検討した。結果、42例(81%)において、経胸壁心臓超音波法を用いた左心耳尖端壁速度の測定が可能であり、経食道心臓超音波法で得られた測定値との間に良好な相関関係をもつことを確認した。学会レベルで報告した。 平成22年度:左心耳尖端壁速度の低下は、(年齢やCHADS2スコア、凝固線溶マーカーやその他の超音波検査指標を含め)左心耳内血栓形成と心原性脳塞栓の発症を予測しうる最も有用な検査所見であることを論文で発表した。
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