研究課題
血管平滑筋細胞は、正常の状態では、収縮型フェノタイプであり、主に収縮・弛緩機構に特化した細胞で、血圧を調整し、束梢組耗への血流を確保する役目を果たしている。一方、動脈硬化巣あるいはバルーン障害などの病変血管では、血管平滑筋は筋原繊維に乏しく、また高い遊走能や増殖能(増殖型フェノタイプ)を示すこと多い。この結果、動脈硬化巣で、血管の再構築(リモデリング)が引き起こされ、血管中膜層の肥厚が生じると考えられる。本年度は、ヒト及びウサギの培養大動脈平滑筋細胞に発環する電位依存性Na+チャネル(Ina)についての電気生理学的及び分子生物学的検討を行なうとともに、その生理的ならびに病的意義につき検討した。その結果、培養ヒト及びウサギ大動脈平滑筋細胞には、lNaが発現すること、さらに、このチャネルは、SCN9A遺伝子にてコードされたNav1.7から構成されていることが判明した。一方、生体内の正常な大動脈平滑筋においては発弟していなかった。ヒト大動脈平滑筋細胞にてSCN9AにてコードされたNavl.7は細胞の喜走と食食に閑与したが、増殖には関与しなかった。さらに、ウサギでのバルーン傷害モデルで傷害48時間後の血管中膜の平滑筋細胞にてもSCN9Aは発現しており、これは血管中膜での細胞の遊走や貪食を介して内膜増殖に関与している可能性が考えられた。このことからナトリウムチャネルを抑制することが、内膜増殖や動脈硬化に対して治療上での標的となりうる可能性が示唆された。土のInaは、培養気管支平滑筋細胞においても発現しているが、副腎皮質ステロイド(dexamethasone)は、このチヤネルに発現を抑制することが判明した。
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