血管平滑筋の病的リモデリングに関与するイオンチャネルの同定とその機能解析

2009 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20590814
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 中島 敏明 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50227790)
• キーワード: vascular remodeling / ion channel / vascular smooth muscle / Na channel / SCN9A / Proliferation / migration / MMP-2

研究概要

ヒト及びウサギの培養大動脈平滑筋細胞に発現する電位依存性Na^+チャネル(I_<Na>)についての電気生理学的及び分子生物学的検討を行なうとともに、その生理的ならびに病的意義につき検討した。その結果、培養ヒト及びウサギ大動脈平滑筋細胞には、I_<Na>が発現すること、さらに、このチャネルは、SCN9A遺伝子にてコードされたNav1.7から構成されていることが判明した。一方、生体内の正常な大動脈平滑筋においては発現していなかった。ヒト大動脈平滑筋細胞にてSCN9AにてコードされたNav1.7は細胞の遊走と貪食に関与したが、増殖には関与しなかった。又、matrix metalloproteinase-2 (MMP-2)の分泌に関与してことが判明した。さらに、ウサギでのバルーン傷害モデルで傷害48時間後の血管中膜の平滑筋細胞にてもSCN9Aは発現しており、これは血管中膜での細胞の遊走や貪食を介して内膜増殖に関与している可能性が考えられた。このことからナトリウムチャネルを抑制することが、内膜増殖や動脈硬化に対して治療上での標的となりうる可能性が示唆された。今後、さらに、血管の再構築(リモデリング)に関する他のイオンチャネルの関与などについても検討する予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Direct action of an angiotensin II receptor blocker on angiotensin II-induced left atrial conduction delay in spontaneously hypertensive rats (2009)
  • 著者名/発表者名: Matsuyama N, Tsutsumi T, Kubota N, Nakajima T, Suzuki H, Takeyama Y
  • 雑誌名: Hypertens Res 32 ページ: 721-726
  • 査読あり
• [雑誌論文] Function and Role of Voltage-Gated Sodium Channel (Nav1.7) Expressed in Aortic Smooth Muscle Cells. (2009)
  • 著者名/発表者名: Meguro K, Iida H, Takano H, Morita T, Sata M, Nagai R, Nakaiima T
  • 雑誌名: Am J Physiol Heart Circ Physiol 296 ページ: H211-H219
  • 査読あり
• [雑誌論文] Eicosapentaenoic acid inhibits voltage-gated sodium channels and invasiveness in prostate cancer cells. (2009)
  • 著者名/発表者名: Nakajima T, Kubota N, Tsutsumi T, Oguri A, Imuta H, Jo T, Oonuma H, Soma M, Meguro K, Takano H, Nagase T, Nagata T
  • 雑誌名: Br J Pharmacol 156 ページ: 420-431
  • 査読あり
• [学会発表] α 1G T-Type Calcium Channels in Mouse Preadipocytes : A Role on Cell Proliferation. (2009)
  • 著者名/発表者名: Oguri A, Tanaka T, Iida H, Meguro K, Takano H, Oonuma H, Nishimura S, Morita T, Nagai R, Nakajima T
  • 学会等名: American Heart Association
  • 発表場所: Florida, U.S.A.
  • 年月日: 2009-11-17