研究概要 |
心筋梗塞によるラット心不全モデルにおいて、血圧、活動量および自律神経活動の概日リズムを評価するため、腹部大動脈に挿入した超小型血圧テレメーターから送信された動脈圧波形をA/D変換し、1000Hzサンプリングで24~48時間連続的に記録した。無拘束状態での心不全ラットの平均血圧、心拍数、活動量は、夜間のラット活動期に上昇していた。さらに心拍および血圧から得られたスペクトル解析の結果、交感神経活動を反映する拡張期血圧の低周波成分(0.15-0.79Hz:LFdp)はラットの覚醒早期に一過性に亢進し(n=13,LFdp:665±176vs.422±124mmHg2/Hz,p<0.05)、副交感神経活動を反映する心拍数の低周波成分(0.8-3Hz)は低下していた(p<0.05)。この一過性交感神経機能の賦活は、中枢性二酸化炭素化学反射感受性と関連しており、1時間ごとに13%二酸化炭素負荷をおこなった検討では、心不全ラットの早朝覚醒期の交感神経活動の亢進程度と睡眠期の二酸化炭素化学反射感受性(CO2負荷によるLFdpの変化量)と有意な相関(r=0.74,p<0.01)を認めた。心不全ラットの中枢性化学反射の亢進が早朝覚醒期の交感神経活動の亢進と関連していることがわかった。この覚醒期にみとめた一過性の交感神経活動の賦活を是正する目的で、β遮断薬(ビソプロロール:15mg/kg/day)とアミオダロン(50mg/kg/day)の効果を検討したところ、心拍数低下への効果は同等であったが、アミオダロンでは覚醒期のLFdpの亢進が30%抑制されたが、ビソプロロールでは16%であった。心不全においてアミオダロンが交感神経の日内リズム異常の是正に有用であることがわかった。
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