研究課題
本研究は、心不全症例における免疫制御機構(特に免疫や炎症反応を制御する調節性T細胞の役割およびTh1とTh2細胞の機能バランス)と心臓自律神経機能との関連を解析し、免疫と自律神経の作用連関を明らかにすることを目的としている。申請者らはヒトリンパ球表面抗原をフロー・サイトメトリー法により解析し、CD4陽性CD25陽性T細胞に含まれる調節性T細胞(regulatory T cell : Treg)を、その特異的な転写因子(Foxp3)を発現する細胞として同定した。これらは健常例ではCD4陽性T細胞のうち、約6~10%を占めるが、心不全症例では健常例に比し低値である傾向(2~3%)を認めた。引き続き重症度や背景心疾患、心臓自律神経機能障害との関連について症例を重ねて評価を継続している。心不全の原因疾患別の免疫調節機構を明らかとするため、まず虚血性心疾患におけるTregの解析を進めた結果、心筋梗塞発症例では健常例に比し、Tregが少ない傾向(健常例6~10%、心筋梗塞症例2~5%)を認めた。さらに心筋梗塞後の臨床経過を評価した結果、病変の再狭窄や新規冠動脈病変が確認された症例では、これらを認めない症例に比し、Tregが少ない傾向を示し、また6ヵ月間の観察期間中にTregの減少を来す例を認めることが確認された。このことから、流血中のTregの存在による炎症反応の制御が冠動脈病変の進行抑制に関与する可能性が示唆された。本研究により解析される免疫系と自律神経系の調節機構、およびそのバランスの破綻が、心不全や心血管イベントの予測因子となることが示されたならば、心血管疾患のリスク層別化や予後評価の新たな指標となる点に本研究の意義がある。特に冠動脈病変や虚血性心不全の病態メカニズムにおいて、Tregによる炎症反応の調節機構は重要であるため、引き続き解析を進める予定である。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件) 図書 (3件)
Bone Marrow Transplant. (On-line)(On-line (Feb 22))
Curr Pharm Des. 15
ページ: 2778-2783
J Cardiol. 54
ページ: 76-79
Cardiology. 114
ページ: 157-163
Circ J. 73
ページ: 1403-1407
Int J Cardiol. (On-line)(On-line (May 11))